アニメを観ていた時のCMで、気になったタイトルがあったので思わず買ってみました。でも想像通りこのジャケ買いは大成功です。
キングダム好きなら是非読んで欲しい。
コミックス化中のライトノベル「項羽と劉邦、あと田中」を紹介します。
(出典:https://comic.pixiv.net/works/6625)
1.はじまり
「項羽と劉邦、あと田中」は原作:古寺谷雉とキャラクター原案:獅子猿によるライトノベルの作品です。
アニメ化作品が多い話題の”小説家になろう”で投稿されたタイムスリップ歴史ファンタジーで、コミックス版は作画:亜希乃千紗によるものです。
(以下第1話と最新話が無料で公開中です。↓)
現代でサラリーマンとして働く主人公”田中”がコンビニから出た途端に、古代中国秦の時代に転移してしまうところから物語が始まります。
秦と言えば、まさに週刊ヤングジャンプの大人気作「キングダム」の時代ですよね。
あれだけ苦労して天下統一した秦がまさに滅亡しようとするときでした。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 13ページ)
店から出た田中は唐突に荒野に転移します。
その後状況を把握する間もなく山賊に襲われそうになりますが、そこに偶然通りかかった田横に救われます。
そこでこの地が古代中国の秦の時代だと聞かされ、ようやく自分がタイムスリップしたことに気が付きます。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 32ページ)
たまたま持っていたハンコによって、田横は田中を遠縁の同族の田中(デンチュウ)と勘違いし保護します。
ハンコ文化もバカになりませんね(笑)
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 39ページ)
偶然にも田中を保護した田横は秦によって滅ぼされた斉の国の王族の末裔で今でいう県の首領(県知事?)の家柄の者でした。
そこに匿われた田中は史実である始皇帝の死期を伝えます。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 57ページ)
血気盛んに斉の復興を望む田横を尻目に、従兄弟の田一族は冷静に事態を考え、祖父の時代に斉から出奔し現在秦の始皇帝の側に仕えている蒙毅という有力者に手紙を届けるよう使いを差し向けます。
そこに田中も同行することになりました。
田中は田横と田広と共に、秦の都である咸陽に旅立ちます。
2.項羽と劉邦は?
この作品の意外性は、ここまで項羽と劉邦が物語の主軸になっていないことです。
ようやく巻中で酔っぱらいの劉邦と、(楚の英雄項燕将軍を出した名門)項家の家柄を継ぐ傲慢な性格の項羽が登場しますが、一瞬だけで終わってしまいます。
まだ歴史を動かす好敵手2人の物語は始まっていないようです。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 74ページ)
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 82ページ)
タイトルが項羽と劉邦をフィーチャーしているのにも関わらず、ようやく出てきた主役を素通りしてしまうところもかなりトリッキーですね。
時代は間違いなく英雄2人を主軸に動き出します。
田中自身も歴史を変えるほどの活躍もしていないこともあり、史実が変わるような流れは考えずらいと思います。
今後どのように項羽と劉邦が田中と関わっていくのか、楽しみな展開になりそうです。
3.田中の知識が普通じゃないw
秦末期に溶け込んでいる田中の適応能力もさることながら、田中自身の中国史の詳しさに驚きです。
まず普通のサラリーマンのレベルではありません。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 48ページ)
秦末期の人物を記憶しており、誰が史実に関わり、今後の漢の誕生まで生き残るのかを覚えています。
例えば、劉邦の軍師である張良の字(あざな)まで。
それは田氏のような教科書に載らない端役のような王族にまで及び舌を巻く知識です。
田中を通して漢が興るまでの歴史を総ざらいできる可能性があり、単純なライトノベルではなく歴史書としても使えるかもしれません。
キングダムばかり読んでいる受験生は、是非中国史の一つとして学んで欲しいですね。
また、田中の義兄(お姉さんの旦那さん)が中国人ということもあり、最初からある程度の中国語も話します(秦人には訛りくらいにしか違和感がないレベル)。
転移した時代も田中にとっては最適な場所だったようです。
4.始皇帝の死因は暗殺だった?!
咸陽の都に着いた田氏一向は蒙毅の館に客人として招かれます。
田横は護衛に、田中は法家たちと論議したりしています。
ここで田中は始皇帝の死後を上手く立ち回るための策を弄しますが、始皇帝は暗殺され、結果として毒を盛られて衰弱死する結果と変わらない結末を迎えます。
しかも蒙毅は皇帝暗殺の罪を着せられ、宦官の趙高に刺殺されてしまいます。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)2(PASH!コミックス) 79ページ)
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)2(PASH!コミックス) 83ページ)
皇帝暗殺の疑いをかけられた蒙毅のため、その兄である蒙恬も窮地に陥ることが分かった田中は蒙恬を救い出し、今後宦官趙高に牛耳られた秦朝との戦いが予想されます。(コミックス2巻末の展開)
史実を知る田中が暗躍しても、決して歴史の流れは変わりそうにありません。
ただし、後世に伝えられた歴史と事実は異なり、田中は本当の歴史の目撃者になるでしょう。
5.史実を先回り
時代の流れが変わらない以上、官軍である劉邦に付くことが当然に流れになりますが、同時にそれは田氏との別れでもあります。
田一族に恩義を感じている田中がいつ離れていくのか、このタイミングも含めて物語がいつ項羽と劉邦に合流するのかが期待される展開なのでしょうか。
(出典:項羽と劉邦、あと田中(コミック)1(PASH!コミックス) 152ページ)
コミックスは2巻、原作のライトノベルもまだ3巻までしか発売されていないようですので続きが気になるところです。
田中にとっても最大の目的は、現代に帰還すること。
そのためにこの時代をやり過ごすのではなく、歴史の渦の中に関わりながら、秦朝の滅亡から漢の勃興までを見届ける壮大な物語になりそうです。
6.田中はオーパーツ
この物語は過去へのタイムスリップを扱う歴史ファンタジーでありながら、実際はファンタジー色はほとんどなく、いかに田中が現代の知識を使って歴史を先回りしていくのかがポイントになると思います。
そして語られるであろう本当の歴史、史実とは違う隠された事実をどのようにエピソード化するのか、本流である項羽と劉邦の実態も例外ではないでしょう。
(そもそもこの時代は漢詩や司馬遷の史記でしか追えない内容ですよね。)
始皇帝や蒙恬、蒙毅などキングダムでも有名な登場人物が多数出てきます。
おそらく話がややこしくなるので信(李信)は出てこないでしょうね。
キングダムは史実に基づきながら主人公の目線で描かれる歴史ファンタジー大作ですが、ここまでの「この項羽と劉邦、田中」はそれを越える読み応えがあります。
もちろん、一般人の田中に派手さはありませんが それでも歴史の知識で立ち回る弁舌や説得力はまるで現代のサラリーマンそのもの。
様々な解釈と歴史的事実の裏側で暗躍する田中は、時代的に映り混むはずのないオーパーツのような存在です。
歴史物でしかも中国古代ということもあり、少し読むのに疲れるかもしれませんが読み応えのある作品です。
是非キングダムを読んだ方にも、「項羽と劉邦、あと田中」を応援して欲しいです。そんな期待できる作品ですよ。
(ラノベ版)
(コミックス版)
おまけ、
同じ中国古代の有名人といえば「パリピ孔明」も面白いですよ。
現代への転生なので好対照ですね。