4月7日から始まったアニメ「スーパーカブ」。
これほどまでに言葉や説明を削いだ、静寂と生活音で表現するアニメってあったでしょうか?
まるで一昔前の日本映画を見るような空気感と間で魅せる、不思議で、でも普通の物語。
アニメ「スーパーカブ」はトネ・コーケン原作のライトノベル作品を原作としています。
舞台は山梨県北杜市。
親もいない、お金もない、友達もいない、趣味もない「ないないの女の子」がHONDA”スーパーカブ”と出会い、成長していく話のようです。
(ゆるキャン△もそうですが、山梨ブーム来てますね。)
女子高生+Somethingの構成ですね。
アニメ1話を観て気になったのが、生活音です。
おそらくですが、かなりこだわっているような繊細さがありました。
始まって五分、主人公の小熊ちゃんは全く口を開きません(笑)。
その代わりに、目覚まし時計の音、カーテンを開ける音、冷蔵庫や炊飯器、お茶やジュースを注ぐ音まで細部の生活音が孤独な少女の生い立ちを語るかのようでした。
ところどころ、ピアノで「ドビュッシーの月の光」も流れているのですが、とにかく口数が少ない。
逆に言えば、形容詞はすべて映し出されたものでした。
そして見えたものから視聴者に想像力で色付けしろという斬新な手法。
それを待ってくれる静寂という間の存在。
私の中でライトノベル作品は「Re:ゼロから始める異世界生活」のナツキスバルのような、頭で考えていること全てを言葉で説明するような、言葉数が多いイメージです。
例えば、
「傷つくのも苦しむのも!全部、全て、俺だけだ!俺だけで済む、万々歳だろうが!どんな辛い思いも、歯を食いしばって我慢して……誰にも、俺と同じ思いを味合わせたりしない!最初から最後まで、傷つくのは俺だけで……何が悪いんだよ!?」
「逃げたい、けど逃げられない。泣きたい、けど泣いてられない。敵がヤバい、けど負けたくない。だから、戦う。弱いのも、頭が悪いのも、全部わかってるけど戦ってやる。あいつらが間違ってる。俺の好きな人たちに、泣きそうな顔させるあいつらが間違ってる。だから、戦う。俺は戦う。みんなにも、戦ってほしい。」
渡鬼並みの長台詞がリゼロたらしめていることもありますが、これこそラノベ感ですね。
まあ、リゼロのスバルは特に台詞が多いので比較対象になりませんけど。
(毎回思うんですが小林裕介さん大変ですね。)
言葉で形容しないと普通のラノベは伝えることが難しいと思うんですよね。
そういった意味でも、アニメってシーンやカットで見せる形容詞が想像させる表現力って素晴らしいですね。
生活音中心に小熊ちゃんの変わらない色のない朝のルーティンから、スーパーカブに出会い変化がありました。
初めて跨った時、視界が開けたような色が変わり始めます。
(まるでフィルターを一枚外したような感じでしたね。)
そこから、スーパーカブによって小熊ちゃんの表情がどんどん豊かになり、ある意味少女らしい笑顔やお気に入りを愛でる可愛いさ、年相応の幼さがありました。
始まりは心配なほど、退屈で変わらない日々のように見せた通学路も坂も、すべてが変わって見えることが不思議ですね。
そして深夜のコンビニのシーンで初めて小熊ちゃんはピンチを迎えます。
キックでエンジンがかからない…。
原因はただのガス欠でしたが、サブ燃料でエンジンが始動した時の喜びと安堵の表情も初めて見せる顔でした。
そういえば、今期アニメには「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」のような作品もあります。
ヒロイン沙優ももちろん可愛いんですが、同じJKでもここまで違うのかと愕然としてしまいますね。
これは比較が悪すぎかもしれませんけど。
忘れていましたが、スーパーカブを買う時のバイク屋のおじいさんが地味にとんでもないことを言ってましたね。
「何で1万円なんですか?」
「人を死なせている、3人」
「これください。」
ここスルーするところか!(笑)。
原付バイクでどうやったら3人も…、事故車ってことですかね。
でも新車みたいに手入れされてますから、まあいいかって…。
あと小熊ちゃんも小熊ちゃんで、その3人の流れを無視して「これください」って間髪入れずに言うあたりもぶっ飛んでますね。
田舎だからいいのか、いや違うだろ(笑)。
色々気になるシーンを置き去りにしながら、最後は始まりと全く同じカットが流れます。
目覚まし時計の音、カーテンを開ける音、冷蔵庫や炊飯器、お茶やジュースを注ぐ。
でも今度はオープニング曲「まほうのかぜ」がバックで流れ始め、全く同じカットが全く違う希望に溢れる朝の描写に変わっていました。
明かなこの対比は、第1話を象徴する「ないないの女の子」からスーパーカブとの出会いによって変わり始める契機を現しているんでしょうね。
色々突っ込みどころはありますが、このアニメの間の表現力には感嘆してしまいました。
そしてアニメという映像で見せるからこそ、この間や生活音、静寂が活きるんじゃないでしょうか?
それはどんなに言葉で脚色しても表せない削ぎ落された表現。
言葉って意外に邪魔してしまうことってありますよね。
1話は終始小熊ちゃん1人の話でしたので、ある意味外的に影響されるものがありませんでした。
2話からはいよいよスーパーカブを通じて世界を広げてくれる友達が登場するようです。
小熊ちゃんの青春はこれからですね。
|