2021年夏アニメが始まりました。
やはり注目の脚本家が携わる2作「探偵はもう、死んでいる。」と「ぼくたちのリメイク」が面白い!
共に原作からのシナリオ改編が大胆に行われています。
売れっ子だからなせる技なのか、原作者だから踏み込める領域なのか、2人の才能あふれる女性脚本家について考えてみました。
(出典:https://tanmoshi-anime.jp/)
赤尾でこ
本名:三重野瞳
福岡県出身
13歳のときに参加した魔人英雄伝ワタルカラオケ大会にて井内監督賞を受賞したことをきっかけに「瞳にDiamond」で歌手デビュー。
その後作詞家、放送作家、ラジオパーソナリティ、脚本家として活動し、脚本家・放送作家での活動の際に”赤尾でこ”の名義を使っているそうです。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いがあるアニメ脚本家ですが、十代から芸能界を生き残るかなりの強者ですね。
今期はアニメ「ヴァニタスの手記」、「探偵はもう、死んでいる。」、「迷宮ブラックカンパニー」の3作品のシリーズ構成を同時に担当しています。
前期の春アニメでは話題になった「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」のシリーズ構成を担当し、秋以降は「古見さんは、コミュ症です。」、「天才王子の赤字国家再生術」、「それでも歩は寄せてくる」3作の人気作品のシリーズ構成が決まっています。
もはやこの人に任せておけば間違いない!、是非任せたい!、と指名が集まっている状態ですね。
それもそのはず、赤尾でこさんの担当したアニメは30分の枠の中で見せ場がしっかりあり、原作を改編しても批判が少ない絶妙な構成が評価されているからです。(プチ炎上はありますけど。)
例えば、前シーズンの「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」は放送中に原作が終了する商業的展開の中で綺麗に13話の中に収めました。(最終巻の発売は放送中の2021年6月1日でした。)
割愛された元カノの存在や日常回、最終回のその後の2人の時間を映すポートレート演出は秀逸だったと思います。
それでいて再度原作も読んでみたいと思わせるスピード感と分かりやすさが今求められている脚本家なのかもしれませんね。
「探偵はもう、死んでいる。」においては始まりから大きく改編したシナリオで驚かされました。
この作品はかなりの原作人気のために早期のアニメ化に至った経緯があり、シナリオ改編はかなりの大胆で勇気のある決断だと思いました。
無論、原作者の意図や承認も含まれているとは思いますが、記憶に新しい「約束のネバーランド Season2」の大幅なシナリオ改編による大炎上と批判に関して人気作だからこその原作ファンの存在を意識せずにはいられないですよね。
それを冒頭からコウモリとの闘いのアクションシーンを一気に描く構成で入るあたりはまさにアニメオリジナルのシナリオ構成が光っていました。
ちなみに原作ではタイトルであるシエスタの死とその後のヒロイン夏凪渚との出会いを経て、シエスタとの出会いを回想するシーンで初めてコウモリとの闘いに突入します。
原作をチェックしたい方は原作を踏襲し読みやすいコミカライズ版を参照してみてください(以下)。
ここまで人気の原作に手を加えたシナリオ改編はあったでしょうか?
特に第1話は初回放送として異例の1時間枠だったため、どこまで冒頭部分を描くのか注目していただけにこの改編は想像を超えていましたね。
おそらく赤尾でこさんだから批判が少なく済んだのであって、実績のないシナリオライターでは原作者も許さなかったでしょう。
それだけアニメオリジナルの展開と、タイトルの探偵シエスタのキャラクターを中心に描くという手法には斬新で惹きこまれるスピード感がありました。
原作を知らない人にも、原作ファンにも楽しめる構成でしたね。
是非まだチェックしていない方は初回を確認して欲しいそんな意欲回でした。
木緒なち
本名:不明
大阪府出身福岡県育ち
ゲームシナリオライターであり、小説家、アートディレクター、グラフィックデザイナーという多彩なキャリアを持つクリエイター。
すでにゲーム発のアニメ「サークレット・プリンセス」でシリーズ構成を担当したことがある脚本家でもあります。
アニメ「神様をはじめました」、あの「ご注文はうさぎですか?」のロゴデザインを担当し、「グリデザイアの果実」ではタイトルデザイン担当もする多彩さ。
商業レベルで絵が描ける小説家は今まで聞いたことがないですね。
そして「探偵はもう、死んでいる。」が人気脚本家がシリーズ構成を担当しているのに対して、「ぼくたちのリメイク」のシリーズ構成は原作者自身が担当しています。
これもかなり異例と言っていいでしょう。
木緒なちさんが大阪芸術大学出身や主人公はゲームクリエイターということもあり、「ぼくたちのリメイク」は自身の体験を元にしている、自身を投影している作品なんでしょう。
「たんもし」同様に「ぼくリメ」も初回異例の1時間放送でした。
驚いたのは主人公橋場恭也のタイムリープしなかった現在を描いた派生作品「ぼくたちのリメイク Ver.β」を組み合わせたところでした。
普通に原作でもキャッチ―な見どころとしてタイムリープと出会いのシーンが見せ場だったはずですが、まさかのVer.βにも触れながらストーリーを重ねるあたりは原作者がシリーズ構成しているならではかもしれませんね。
見せ方によっては物語が分かりにくくなり、原作の回想と重なってしまう恐れがある難しいアプローチですよね。
このあたりはゲーム制作にも携わった木緒なちさんの”制作”としての矜持なんでしょうか。アニメという枠にオリジナルストーリーとして改編していく意欲とチャレンジを感じてしまいます。
本編での見せ場である”制作”としての成立させる意地を今後の展開でも感じられる作品になって欲しいですね。
商業的にも原作と派生作品も同時に紹介できる欲張りなプロモーションでもあります。一言でいうとこれは原作者ならではの手法であって、完全な原作者無双ですねw。
原作をチェックしたい方は原作を踏襲し読みやすいコミカライズ版を参照してみてください(以下)。
同年代の福岡育ちって
赤尾でこさんも木緒なちさんも共通点が多いですね。
おそらく同年代2021年現在アラフォーの女子であり、ともに福岡育ちです。
この年代の福岡って才能の宝庫だったのか、これは偶然じゃないかもしれません。
赤尾でこさんに関しては個人的に大好きなアニメ「ノラガミ」のシリーズ構成を担当しているときから注目している人物でした。その後様々な作品でもシリーズ構成を担当し、深夜アニメで売れっ子脚本家と言えば赤尾でこさんと筆安一幸さんってイメージがありましたね。
二人ともアニメ初回放送ではかなりの改編と構成を変更しているところも共通していますが、立場は全く違います。
一方は実績のある人気脚本家、もう一方は原作者。
この違いこそあれど、アニメとしての個性を表現することでは共通しています。
批判を避けて単純に原作を垂れ流すこともできると思います。特にライトノベル発のアニメなので1話まるまる伏線のための回になる可能性もあるでしょう。やはりそういった小説の作品構成とアニメでは全く違うアプローチとエンターテインメントとして表現があってしかるべきと思います。
原作リスペクトが叫ばれる炎上炎上の世の中において、あえてエンターテインメントにチャレンジする2人の脚本家に今後も注目ですね。
おそらく2作品ともに今期覇権になる勢いのある夏アニメになること間違いないでしょう!