2021年夏アニメで「転生したらスライムだった件」の2期後半クールが放送中です。
そして、やっぱり面白い!
何が面白いかって、建設的なストーリーとバトルの織りなす緻密な構成ですよね。
ちょっと分解してみると名探偵コナンとの意外な共通点に気が付きました。
1.転スラ2期後半クールはテンペストの反撃を丁寧に描く
前半クールでは魔王クレイマンの謀略によってテンペストが危機に陥りました。
ヒナタの襲撃によって足止めされたリムルは成す術もなく蹂躙されたテンペストと虐殺された仲間たちの屍の山に怒りに打ち震えます。
一体誰がヒナタを消しかけたのか?
ファルムス王国はなぜテンペストに侵攻したのか?
深まる謎の中でリムルは悲しみに暮れます。
その後魔王として覚醒したリムルによって黒幕だったクレイマンへの逆襲が始まる。
っといった流れから後半クールが絶賛放送中です。
後半クールにはさらにリムルの魔王化によって封印を解かれた暴風竜ヴェルドラやアークデーモンのディアブロなどの新キャラクターも加わり、今まで登場しなかった魔王たちも現れ、増大した登場人物が乱舞します。
一人一人に人気声優さんがついていくので、この作品を作るには一体何人の声優さんを揃えなければならないか心配になるほど登場人物が多く、個性的ですね。
2.新興国には高度な政治的な判断と同盟関係が求められる
現在高度な政治交渉が行われ、テンペストはブルムンド王国、獣王国ユーラザニア、魔導王朝サリオン、元々盟約関係だった武装国家ドワルゴンによって同盟が結ばれました。
この同盟に至る交渉と成り行きだけで開始から5話が費やされている贅沢さもこの作品ならではの魅力ですね。
というのも、普通の作品ならこんなに丁寧に描けるほど視聴者は待ってくれないでしょう。
やはり「転スラ」は着実に積み重ねていくリムルが築く関係性がロジカルだからこそ、仕込みとして後半のバトルの下地になっていくところが見せ場になりますね。
周辺国にとって新興国の存在は決して良い側面だけではありませんからね。
新興勢力によって今までの均衡したパワーバランスが崩れてしまう可能性もあり、テンペストの作り出す農作物や製品は今までの交易にも大きく影響を及ぼします。
このあたりが極めて現実的というか、完全に利害関係によって敵味方の区別や邪魔かどうかが判断されるところでしょう。
人間から転生したリムルにとって人間の国家であるファルムス王国は最も親近感が沸きそうな外交先であったにもかかわらず、結果としてもっとも憎むべき相手になってしまいました。
人間の持つ小賢しさやいやらしさ、未知へのものへの恐怖が元人間のリムルにとっては意外な結末を辿るわけです。
結果としてドワーフやエルフなどのほうがよほど人間的でテンペストにとっては組みやすい相手だったのかもしれません。
リムルの解決法はその後も一貫性がありました。
同盟を作って、テンペストの地位を向上し、外堀を埋めることで国家としてテンペストを認めさせることで未開の国々に対抗する新興勢力を作ったことですね。
これって建設的で極めて政治的な判断での建国が成立してしまうわけで、やはりリムルは30代の日本のサラリーマンなんてとっくに凌駕してしまうほどの曲者と言えるでしょう。
3.ロジカルあってのチート回収
政治を丁寧に描けば描くほど、1つ1つの国家の思惑や登場人物の背景を描く必要があります。
なのでこの政治的な話がやけに丁寧で長いのです。
そう考えると、この丁寧な助走距離や伏線がこの作品のポイントでもありますよね。
従来のアニメ作品も前半パートに伏線があり、後半パートでしっかり回収していく流れや前半をゆるく日常的な関係性を描き、後半で一気にバトルするような緊張と緩和が見られます。
でもこれだとしたら転スラの面白さには繋がらないですもんね。
転スラの特徴は、前半をいかに人間社会的なロジカルで建設的な話し合いで組み立てて利害関係をしっかり構築するところだと思います。
そして、それにスパイスとしてチート的リムルの強さで無理な余白を一気に埋めてしまう爽快感が気持ちいい。。。
一見すれば矛盾している内容が同居しているバランスこそが転スラなんでしょうね。
これって、私が思うに名探偵コナンに似ているんじゃないかと思うのです。
名探偵コナンは人間の欲望や嫉妬、怨恨が事件になる様を説明し、それをトリッキーに完全犯罪として成立させてしまう仕込みがしっかり描かれます。
その上で後半パートでいかにコナンがその謎を解き明かすかがロジカルに説明されるのがパターンになっています。
しかし、どこかで無理や犯罪者の反抗にあって最後の場面でロジカルが崩壊危機に陥るケースが見られます。
すべてを白昼の下に晒された犯罪者がやけくそになって力に訴えるあれです。
(水戸黄門でいうところの、印籠が出てきてご老公と判明しても悪あがきして反撃するあれですね)
建設的な完全犯罪の成り行きに、ロジカルな謎解き、それでも埋まらない最後の悪あがきに対して、コナンは博士の道具ですべての帳尻を合わすかのように回収してまう爽快感もまた転スラと同じですよね。
ロジカルで建設的であればあるほど、チートが活きるのが転スラと名探偵コナンの共通点だと思いますね。
4.今後もますますロジカルの歪みに期待してしまう
ロジカルであればあるほど、予定調和を崩すイベントこそが物語を彩ります。
順調すぎる展開は飽きますからね。
順調だったテンペストに魔王クレイマンの襲撃によって初めての危機が訪れました。そして最強と思われたリムルにもヒナタの力で初めての敗北があったことも今期の最大の見せ場になったのかもしれません。
そういった構成を順序良く見せることである程度1期の緩やかな流れの調和を崩し、緊張と緩和があったのも2期として面白いところですね。
さすが転スラ、その辺は心得ていますね。
テンペストの内政が順調であればある程、外敵圧力や脅威は魔王ばかりではないということが露呈しました。
そしていよいよ登場してきた魔王たち。
今後ワルプルギスの主役はクレイマンではなく、古参の魔王たちによってリムルがどのような処遇になるのか、リムルとしてもまだまだ最強といったわけではなく成長の余地があること、必要性があることが3期以降の奥行きになりそうです。
そして忘れてはならないヒナタの存在、異世界人として最強の剣士として今後リムルやテンペストにとってどのような関わり方になるのか、やはり魔王たちをベースに利害関係や目的が求められますね。
今のところクレイマン以外の魔王たちに野望のようなものは感じられません。しかし匙加減一つで世界はいかようにもなるほどの強者にとってこの予定調和はどのように壊されるのか。いずれにしてもきっかけはリムルになることは間違いなさそうです。
原作も継続中の作品ですが、壮大な物語のために終着点が非常に気になります。
登場人物が増えに増えていく作品は数あれど、ここまで多くの個性が描かれる作品は見たことがりません。(ゴブタの成長も気になりますよね)
この先3期4期が継続するのは間違いなさそうですが、なろう系最大のヒット作として納得のいく結末を期待したいと思います。
とにかく言えることは転スラって最高に面白い!って思えること。
今シーズンのアニメでは頭1つ抜けて楽しめている貴重な作品ですよ。