秋葉界隈で働く人のアニメレビュー

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アニメ「ブルーピリオド」とピカソ「青の時代」とYOASOBI「群青」の話

2021年10月から放送中のアニメ「ブルーピリオド」

勉強も遊びも卒なくこなす主人公(八虎)が

絵を描くことを通して初めて感じた生きている実感と

仲間たちと芸大を目指す青春グラフィティです。

 

夏アニメでは「ぼくたちのリメイク」や、かなり前ですが「ハチミツとクローバー」も芸大をテーマにしたストーリーでしたが、本作はよりリアルな芸大受験の過程や好きなものを突き詰める狂気のような若者たちの実感がテーマになっていますね。

物語を楽しむ上で、2つのことを考えてみました。

それはブルーピリオドを想起させたピカソの話、

ブルーピリオドから想起した群青の話。

 

 

 

ブルーピリオドとは

 

アニメ第1話で象徴的だったのは、朝方の渋谷の街を映す青でした。

八虎には青に見えた印象を美術の授業で表現したことが始まりでしたね。

 

それと同時に印象的にカットインしていたのがピカソ展のポスターでした。

 

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出典:https://blue-period.jp/story/

抽象画の象徴のような巨匠ピカソは、美術大学受験には全く程遠い印象です。

ピカソの絵は、一見子供が描いたような分かりにくい構図だったり、目や鼻すべての配置やサイズ感に違和感を覚える、常識外の印象がありますよね。

もちろん、ピカソ自身はスペインで生まれ、画家を志し、パリで修行を積む本格派の書生でした。

代表的な抽象画の作風に行きつくまでには多くの悩みと困難を克服して変容していった経緯は彼の作品の変遷でも分かりますね。

 

その中で、特にフランスに移り住んだ19歳から4年間の作品は「青の時代」と呼ばれ、ピカソの青春と苦悩を表す作風として切り取られています。

その「青の時代」を英訳したものが「ブルーピリオド」です。

 

「ブルーピリオド」は、ピカソの青青の時代をインスパイアした現代の若者たちの青春と苦悩を表現した題名なんですね。

 

 

群青の歌詞

 

音楽ユニットYOASOBIの「群青」という楽曲が漫画「ブルーピリオド」をテーマにした作品ということはずいぶん前から知られていたことかもしれません。

そこで改めて歌詞を読みこんでいくと、第1話の内容がふんだんに取り入れられていることが分かります。

 

 

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出典:https://blue-period.jp/story/

 

群青

 

作詞:Ayase   作曲:Ayase


嗚呼、いつもの様に
過ぎる日々にあくびが出る
さんざめく夜、越え、今日も
渋谷の街に朝が降る
どこか虚しいような

そんな気持ち
つまらないな
でもそれでいい
そんなもんさ
これでいい

知らず知らず隠してた
本当の声を響かせてよ、ほら
見ないフリしていても
確かにそこにある

感じたままに描く
自分で選んだその色で
眠い空気纏う朝に
訪れた青い世界
好きなものを好きだと言う
怖くて仕方ないけど
本当の自分
出会えた気がしたんだ

嗚呼、手を伸ばせば伸ばすほどに
遠くへゆく
思うようにいかない、今日も
また慌ただしくもがいてる
悔しい気持ちも
ただ情けなくて
涙が出る
踏み込むほど
苦しくなる
痛くもなる

感じたままに進む
自分で選んだこの道を
重いまぶた擦る夜に
しがみついた青い誓い
好きなことを続けること
それは「楽しい」だけじゃない
本当にできる?
不安になるけど

何枚でも
ほら何枚でも
自信がないから描いてきたんだよ
何回でも
ほら何回でも
積み上げてきたことが武器になる
周りを見たって
誰と比べたって
僕にしかできないことはなんだ
今でも自信なんかない
それでも

感じたことない気持ち
知らずにいた想い
あの日踏み出して
初めて感じたこの痛みも全部
好きなものと向き合うことで
触れたまだ小さな光
大丈夫、行こう、あとは楽しむだけだ

全てを賭けて描く
自分にしか出せない色で
朝も夜も走り続け
見つけ出した青い光
好きなものと向き合うこと
今だって怖いことだけど
もう今はあの日の透明な僕じゃない
ありのままの
かけがえの無い僕だ

知らず知らず隠してた
本当の声を響かせてよ、ほら
見ないフリしていても
確かにそこに今もそこにあるよ
知らず知らず隠してた
本当の声を響かせてよ、さあ
見ないフリしていても
確かにそこに君の中に

(引用:YOASOBI 群青 歌詞 - 歌ネット

 

歌詞そのものが第1話ですよね。

私はサビ前とサビ部分が八虎の葛藤を表す名シーンだと思います。

音楽に乗せるとJポップの型にハマって歌として認識している人のほうが圧倒的に多いでしょうね。

 

でも、読み込んでいくとまさに「ブルーピリオド」です。

 

そして「群青」というタイトルにしたところもセンスを感じます。

群青色は深い青であり昔からある紺色の1種でありながら、日本語としての群れるという漢字を使っている不思議な組み合わせです。

でもこの”群”がまさに若者が集まっているような印象があることから青春グラフィティにぴったりな日本的表現です。

そういった意味でも、YOASOBIのAyaseさんの言葉選びが素晴らしいですね。

(この歌で今年の紅白出て欲しいなぁ...)

 

 

好きなものを好きだという

怖くて仕方ないけど

 

 

...うん、美術部の先生のセリフもよかったなぁ。

 

 

 

 

測れない”美術という特殊性”と”青春”

 

物語の前半の見せ場は芸大受験、とくに東京芸大を目指す過程になります。

アニメはある程度駆け足になる可能性が高いですが、いくらセンスややる気があっても高校2年の途中から本格的に美術大学受験を目指すのはかなりの難易度でしょう。

 

私の友人で芸大出身者が何人もいますが、ほとんどの人が浪人したか浪人を覚悟したと言っていましたね。

 

普通の大学は偏差値を物差しに比較されます。

偏差値という言葉自体はあまりいい印象ではありませんが、同時代同時期の高校生が一つの物差しで測られる人生で数少ない指標ではあります。

 

そこには公平で公正な試験があるわけで、

長い人生においてこれほどはっきりとしたレーティングはないですからね。

 

しかし、美術というカテゴリーにおいては数値化できないエモーショナルな側面があり、努力ではどうしようもないセンスが必要になります。

 

しかも、その後芸大を卒業したとしても未来が約束されるわけでもなく、芸術家として食べていくにはさらに狭き門を目指さなければなりません。

 

有名な話ですが、

若きピカソは日銭を稼ぐために富豪の肖像画を描いていた時期があるそうです。これを妥協と呼ぶのか、迎合と呼ぶのかは後の作品によってしか判断されない不思議な世界ですね。

 

そんな保証もない世界を目指す若者たちと苦悩や挫折、夢を諦める者たちとの邂逅こそ八虎を成長させる物語の大事な1ページであり、実際の美大・芸大の環境もきっと近いものがあるんでしょうね。

金曜夜のTBSのアニメ枠はテーマ性のあるものが多いですね。

(津軽三味線の”ましろのおと”とか)

 

 

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出典:https://blue-period.jp/story/

 

 

アニメ「ブルーピリオド」を見た後に、改めてYOASOBIの「群青」を聞いてみてください。きっとこれまでの印象が変わると思いますよ。

八虎の成長はもちろん、芸大を取り巻く人間関係も今後注目ですね。

 

でも...想像通りやはり変わり者だらけですよね(笑)