豊作の2020年10月期アニメにおいて、異色作「憂国のモリアーティ」の魅力を紹介します。
なぜ19世紀末〜20世紀初頭のイギリスが舞台なのか、いったいモリアーティとは何者なのか。
一見取っ付きにくいこの作品のすばらしさと物語の背景について触れていきます。
今シーズンのおすすめ作の1つです。
憂国のモリアーティ
タイトル「憂国のモリアーティ」の英題(サブタイトル)は「MORIARTY THE PATRIOT」。
国の実情を憂う者=愛国者 というサブタイトルがモリアーティの今後を暗示させる表現です。
モリアーティとは
この物語の主人公の”モリアーティ”は、コナンドイル作の「シャーロック・ホームズ」に出てくる犯罪者”モリアーティ教授”のことです。
シャーロック・ホームズと同等の知能を持ち、犯罪界のナポレオンと言わせしめた最大のライバルです。
現在のアニメの青年像をイメージすると、全く異なる怖い挿絵ですね。
それだけ当時のイギリス社会の闇が深く、シャーロック・ホームズを追い詰めた強敵としての威厳や風格があります。
何がそこまで醜悪な面構えの大量殺人鬼に貶めたのか。シャーロック・ホームズにつながるエピソード0と言ったところでしょう。
犯罪者モリアーティ教授に至る背景
19世紀のイギリスは大英帝国としてこの世の春を謳歌している時代です。産業革命で経済が潤い、戦争で他国に領土を築いて搾取を行う社会構造。その中心が貴族でした。
社会は貴族階級の特権と差別で溢れています。
作中も身分差別や市民が貴族に搾取されている様とその理不尽さが、埋められない階級制度と共に時代背景として描かれています。
勧善懲悪とクライムコンサルタント
その中でモリアーティは立ち上がります。
弟のルイスと共にアルバートを介して貴族モリアーティ家に入ります。
表向きの特権階級の地位を手に入れ、少年期からの頭脳と行動力を活かし、差別や特権階級への不条理に立ち向かい、それをクライムコンサルタントとして体現します。
弱き者を助けるため、横暴な貴族に罰を与えるために殺人教唆や殺人幇助を行うことで社会の闇に向き合いますが、単純な勧善懲悪というわけではない裏の仕事。
しかしそれに対して全く葛藤している様子はありません。最初から仕組まれていたような落ち着き、そして悪を悪で裁く様。
やがて、若き日のシャーロック・ホームズとすれ違っていく設定のようです。
感想
なぜ19世紀末のイギリスの設定なのか、最初は金髪白人のイケメンに全く共感はありませんでしたが、
あの有名なシャーロック・ホームズの宿敵が誕生するまでの殺人鬼を作る社会や環境を当時の時代と共にエピソード化することで最後は感情移入できました。
(ちなみに私の中ではシャーロック・ホームズは今でも犬のアニメのイメージですけど)
むしろ私は今現在、モリアーティを応援したい。(作者の思うツボですか…)
ただし、殺人は犯罪。やり方としてどうなのか、他に方法はなかったのかという考え方はありますが、差別や不条理に直面した主人公たちや市民たちを考えると、どこか納得してしまいます。
そう言った意味でも、見た後に心に何かを残す、勧善懲悪では片付けられかい消化不良の何かを生み出すいい作品と思います。
頭脳を使ったダークヒーローが社会の闇や構造に立ち向かう様は必殺仕事人的で、ストーリー展開は時代劇に近いかもしれません。実はそこが見やすいところでしょう。
今後も繰り返えされるクライムコンサルティングと完全犯罪が彼をどう変えていくのか、どのように闇に落ちていくのか、展開が楽しみです。
(まとめ読みする価値ありますよ。)