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究極のプラトニックラブの形 「死神坊ちゃんと黒メイド」は”美女と野獣”なのかな

2021年夏アニメの中で異彩を放っている「死神坊ちゃんと黒メイド」。

完全にノーマークでしたね。

 

設定の妙とこの奇妙なもどかしさの行く末は…

で、これって一体どのジャンルに当てはまるのか?

 

…触りたい触れないー…

 

この究極のプラトニックラブを考えてみました。

 

 

 

 

 

アニメ「死神坊ちゃんと黒メイド」は2017年よりサンデーうぇぶりに連載中のWEB漫画作品を原作としています。

あの「ダンまち」の白根秀樹さんがシリーズ構成を担当しているようです。

”せつなさ”と”もどかしさ”をベースに孤独な心を揺さぶってくる黒メイド”アリス”のお色気と誘惑も楽しめる異色のラブコメディ。

 

物語のあらすじは以下になります。

 

 

0.あらすじ

 

触りたい 触れない ―世界で一番、切ない両想い。

 

幼い頃、「触れたもの全てを死なせてしまう」呪いを魔女にかけられた、貴族の「坊ちゃん」。

呪いによって周囲から拒絶されるようになった彼は、森の奥の大きな館で孤独な日々を過ごす。

そんな彼に仕えるのがメイドの「アリス」。

しかしそのアリスの存在が坊ちゃんの一番の悩みの種。

なぜならアリスは日常的に逆セクハラを仕掛けてくるから……!

いつもギリギリの距離感で誘惑してくるアリスと、彼女のことが愛しいけれど手をつなぐことすら許されない坊ちゃん。

 

二人の純愛は、果たして実を結ぶのか…!?

 

(引用:https://bocchan-anime.com/story/

 

 

 

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出典:https://bocchan-anime.com/story/02.html

 

1.疎外感と絶望感

 

幼い頃に魔女によって触るものすべてを死に至らせる呪いをかけられてしまった坊ちゃん。

本邸から遠く離れた町のはずれにある別邸にほぼ幽閉されており、家族(特に母親)から疎外されています。

物語のベースに、この愛されない環境が常にのしかかっています。

一応、元幼馴染を遣わして近況確認こそ行われているものの、妹は別邸に行くことすら止められている状況から母親にとってもかなり疎ましく思われている模様です。実の母親ですから完全に毛嫌いされているわけではなさそうですが、世間体が重視される貴族社会が垣間見れます。

もちろん、そのことは坊ちゃん自体も自覚しており、かなりの幼少期から幽閉されていることから、この母親に愛されない孤独感こそが自身の愛と刺激に飢えている心境の根柢であり、死ぬまで孤独に苛まれる絶望感を演出しています。

 

 

2.恋心ともどかしさ

 

メイドのアリスはその中で唯一の坊ちゃんの理解者であり、愛情の対象になり得る存在です。

物語の冒頭から坊ちゃんとアリスがすでに特別な存在と認め合い、両想いの関係にあることも不思議な設定かもしれませんね。

普通のラブコメではここが見どころだったり、出し惜しみして想いが伝わらないもどかしさやすれ違いを演出して恋心が成就していくような流れになるところ、3話の段階ですでに告白済みです。

ただし、坊ちゃんが想うアリスへの気持ちと、アリスが坊ちゃんとずっと一緒にいたいと思う気持ちはどこか同じなようですれ違っているかもしれませんね。

 

そして触れられない呪いを介したアリスの大胆な誘惑という名の逆セクハラも見どころでしょう。

性質上絶対に寸止めしなければならない、しなくては死んでしまうという究極の設定こそが年頃の男子への甘美な誘惑であり、触れられないからこその挑発なのか、はたまた死んでもいいと思える究極の愛の形なのか。

このもどかしさの先にある切なさが常に後味として残る感覚がただのラブコメではないところなのでしょうか。

 

 

3.随所にアリスの出自の謎が…

 

2話でアリスの母親がかつて本邸のメイドであったことや、その母親が別邸て坊ちゃんの祖父とダンスの練習をしていたことが明かされます。

また3話ではアリスの容姿を母親と勘違いした通行人(のちの主要キャラと思われる)がいたことから、アリス自体の出自も何か謎がありそうな予感です。

 

物語の設定上ピアノはあるがまだ電気がない時代(中世のヨーロッパ風?)のようですので、普通の封建的関係ならばメイドと主人が結ばれることは考えにくいくらいの身分差がありそうです。

それは幼馴染が屋敷にやってきた際も感じられた、客観的には貴族と使用人の関係です。

もしも祖父とアリスの母親の関係が何か今後の秘密に関わるのならば、どこか悲恋も予感させる展開かもしれませんね。

 

 

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出典:https://bocchan-anime.com/story/03.html


 

 

4.2話までで終わっても十分綺麗なストーリーだけど

 

物語のスパイスとして毎回の見どころとしてアリスの逆セクハラがありますが、やはりどこまでいっても敬語のためにベースの主従関係が透けて見えます。そのためか一層疎外感と切なさが残ります。

この呪いによって触れられない関係だからこそ、坊ちゃんにとっての女性の存在は家族を除いてアリスしかいない、主従を越えて坊ちゃんを慕うアリスにとって呪いこそが坊ちゃんを独占できる絆なのかもしれません。

 

この関係性って、ディズニーの「美女と野獣」の設定に似ていますね。

ぼっちゃんは呪いによって野獣として幽閉されている存在ですし、アリスはベル同様に坊ちゃんに仕えることで外界のノイズを避けることが出来、そして2人は想い合っている。

物語の帰結が呪いが解けて愛が成就することであって欲しいのならば、物語のコアであるもどかしさの関係性は2話の段階で十分伝わりました。

正直言ってここでこのアニメが終わっても凄く綺麗だったかなと思いますね。

 

 

5.呪いと魔女と気になる最後は?

 

もちろん設定を活かした逆セクハラに焦らされる坊ちゃんとアリスの物語なのであれば、呪いが解けないほうがずっと関係性を維持できるでしょう。

特殊設定の日常系作品としても十分微笑ましく需要がありそうですね。

 

ただ、私はやはり坊ちゃんが呪いから救われて欲しいと願ってしまいます。

そのためには、この呪いが意味を持たないと話が進まないと思います。

何かの原因でこの孤独感を坊ちゃんが強いられているのか、物語に深みを増すためには呪いの秘密や魔女が存在するこの世界の謎、すべてが救われるために一体何をすればいいのかを真実の愛をベースに描いてほしいと思います。

 

考えられる展開としては、①魔女に会っても呪いは解けないために絶望し、②その後何かのハプニングや重要なイベントで坊ちゃんが愛するアリスに触れてしまう。③その時に呪いが解けるという流れが自然でしょうね。

それか、②実はもともと人間に触れても呪いは発動しない、とかも落ちとしてプラトニックラブを描く作品としては十分かもしれません。

 

今後の展開は原作を読んでいないので分かりませんが、現在13巻まで発売され連載中のようです。

そう考えると意外にも逆セクハラの愉しむ設定がメインの可能性が高いかもしれません。でも、この秀逸な設定と物語の根柢に流れる孤独感とプラトニックラブは何かしらの帰結があって欲しいと願わずに入られません。

そんな不思議な気持ちにさせられる奇妙で美しいストーリーですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(おまけ)

花江夏樹さんと歌うOP曲「満月とシルエットの夜」とED曲「夜想曲」を歌う、アリス役の”真野あゆみ”さんの声も素敵です。

他の作品は出演は分からないのですが、今回のアリス役で初めて知りました。

久しぶりにこの声誰?歌上手いな…と思ってしまいましたね。

(ちょっと前の鬼頭明里さんの時も同じような印象ありました。)

今後注目したい声優さんですね。