2021年夏アニメの中でイロモノ扱いと思われた「カノジョも彼女」。
また週刊少年マガジンのラブコメかよ!っと思うなかれ!
実はこの作品は「五等分の花嫁」の流れから続くバリエーションラブコメの系譜作の中でも、より計算し尽くされた、現在のマガジンの必勝パターンを具現化した、再現性を問われた作品なのです。
ラブコメヒット作の条件と再現性、今後もこのパターンで再生産されるであろう必勝パッケージを考えてみました。
0.「カノジョも彼女」とは
あらすじ
高校生となった主人公・向井直也は、ずっと想いを抱いていた幼なじみの少女・佐木咲に交際を申し込んで受け入れられ彼氏・彼女の関係となるが、ほどなくして自身を想い続けていたというもうひとりの少女・水瀬渚から交際を申し込まれる。
当初は咲がいるため断ろうとした直也だったが、渚のいじらしさや魅力に心を動かされ、悩みぬいたあげくに、三者合意のもとでの二股交際と、両親が不在にしている自分の家での、3人による同居を提案する。
当然猛反対する咲だったが、渚は直也と一緒にいられるならと受け入れ、渚のいじらしい姿にほだされた咲も結局は了承、3人は直也の自宅で内緒の同居生活を開始する。
当初は渋々だった咲も、渚の魅力などに惹かれて3人での生活を楽しいと思うようになっていき、渚とも親しくなる。
さらに学校にて(3人で付き合っていることを秘密にしている)直也、咲、渚が密かに集まって昼食を取っていたところ、同級生にして美人動画配信者であるミリカこと星崎里香にその光景を見つかり、3人の関係を知られる。身バレでストーカー行為などを恐れたためボディガード代わりの人間が欲しくなったミリカは、自分も直也の彼女に立候補するが直也は拒否。その後意地になり、さらに本気で直也に惚れったたミリカは、直也の家の庭にテントを立てて泊まり込むなどし、そこから追い出されても直也の家のアパートに引っ越してくるなどして、直也を狙い続ける。
また、以前からの咲の親友である桐生紫乃も咲、直也、渚の関係を知る。実は密かに自分も直也のことを想っていたが故に、直也が「親友の彼氏」ではなく「親友と別の女に二股をかけている男」になったことが許せずさらに自分も直也を諦めきれなくなり、3人にかかわってくる。
(引用:カノジョも彼女 - Wikipedia)
原作が気になる方は最新巻をどうぞ↓
1.ヒロインのバリエーション
「カノジョも彼女」には、咲と渚の彼女2人の他に、物語を彩るミリカと紫乃の2人のヒロインも登場します。
原作継続中なので他にもあと何人か登場しても何の不思議もないですが、どのヒロインも個性的で主人公のことが好きで同級生という共通点以外はバラバラの設定です。
同じマガジン掲載作の「五等分の花嫁」が5人、「彼女、お借りします」が4人なのでヒロインのバリエーションは4人以上が鉄則なのかもしれませんね。
王道ラブコメ作品において、ハーレムを作る傾向は昔から見られました。
ただし、最初からメインヒロインに帰結する本流がベースにあるために、如何に横恋慕が描かれるのかがエピソードでしたよね。
読者は薄々結末がわかりながら自分だったら誰を選ぶか?結局報われない方のヒロインに想いを馳せるんです。
後半の「五等分の花嫁」や、「彼女、お借りします」がまさにこのパターンだったように思います。
「カノジョも彼女」はあえてこのパターン崩しを初期設定でやってのけた異色な作品かもしれません。
例えば、咲が本流で、渚が負けヒロイン。と従来ならば位置づけされるところを主人公の突き抜けたワガママ(本能)で2人を平等として扱うことは、「五等分の花嫁」の前半のエッセンスも入っていると思われます。
ここまででも週刊少年マガジンのラブコメ英知とアーカイブを集結させた人造ラブコメ感がありますね。
2.タブーを作る
「カノジョも彼女」のテーマは『正々堂々、二股する話』です。
もちろん、二股交際自体が完全なタブーであり、この設定をメインテーマに置く当たりは問題作ですが、「彼女、お借りします」もまたレンタル彼女がテーマになっていますのでデート倶楽部ビジネスのほうがグレーゾーンですよね。
人気連載作で次期アニメが決まっている「カッコウの許嫁」は乳児取り違えや義理の妹との近親愛なんかも扱っているところから、最近の週刊少年マガジンのラブコメはタブーありきの設定が好まれる傾向があります。
如何にタブーをポップに見せるか、普通なら批判・炎上しても不思議ではないテーマをあえて扱うあたりは編集部が毒薬をスパイスくらいに考えていますね。
これくらいのタブーは作品個性として当たり前になってきています。
そもそも「五等分の花嫁」すら最終的に5人に好かれた主人公が誰か一人を選ぶあたりも、その後の関係性(親戚関係)を考えるとけっこう残酷な話ですよね。
でも後先考えずに突き進めるのが青春なのか?ってことにしましょうか。(常識を持ち込むこともまたタブーってわけです。)
「カノジョも彼女」のOP曲は、三角関係をポップに表現したトライアングルが象徴的です。
最近のOPカットでは秀逸なデザインなんじゃないかと思います。
3.主演級声優さんを配置
これは言わずもがなかもしれませんが、バリエーションラブコメはヒロインの声優さん1人1人が主演級の豪華さがあります。
佐木咲役は佐倉綾音さん、水瀬渚役は和氣あず未さん、星崎里香役は竹達彩奈さん、桐生紫乃役は高橋李依さん。
完全に「五等分の花嫁」「彼女、お借りします」と被っている配役ですよね。
誰がヒロインとして選ばれても不思議じゃない豪華な布陣を配置するのも最近のラブコメの王道かもしれません。
あえて言うなら「彼女、お借りします」で桜沢墨役だった高橋李依さんあたりは控えめな役が似合いますね。
佐倉綾音さん、竹達彩奈さんはもはや常連。これに東山奈央さんあたりが加われば現代のラブコメパッケージと言えるでしょう。
ありがちですが、みんな歌手としても実績があるんのでどこかでメインヒロイン回ではオリジナル曲なんかもあるかもしれませんね。
4.ヒットするラブコメの再現性とパッケージ化
ヒットするラブコメの必要条件を網羅すれば、いくらでも週刊少年マガジンは質の高いラブコメを再現できるパッケージを持ったようです。
決して専売特許というわけではないですが、「タブー」「バリエーション」「ハーレム」の3つが上手く揃えば、主人公が秀才だろうが落ちこぼれだろうが変態だろうが関係なく、むしろ「タブー」を犯す初期設定こそが重要なんじゃないでしょうか?
そして何より、週刊少年ジャンプと週刊少年サンデーでは現在ラブコメ作品が手薄状態にあります。
これは週刊少年誌の個性とも言えるかもしれませんが、最近アニメ化されたラブコメ作品では週刊少年マガジンがほぼ独占状態ですよね。
そう考えるとマガジン編集部はラブコメの鉄板パターンを確立したのかもしれません。
特に秀逸だったのは、「五等分の花嫁」があと数話で最終回という段階で「カッコウの許嫁」の連載が始まった黄金リレーです。
マガジンは決してラブコメを切らさないという矜持を感じざるえませんでした。
そして「五等分の花嫁」「彼女、お借りします」「カノジョも彼女」の3作品はTBSアニメ枠を独占中ですからね。(おそらく「カッコウの許嫁」もTBS系枠の放送でしょう。)
時代は王道ヒロインのシチュエーションラブコメから、タブー犯してハーレムを形成するバリエーションラブコメが主流になりました。
さて、気の早い話ですが2022年放送の「カッコウの許嫁」も楽しみです。
そして次に週刊少年マガジンで生まれるラブコメにもこの条件が含まれているか、ヒットラブコメの再現性を検証してみたいですね。