12月20日に「いわかける!-Sport Climbing Girl-」が最終回を迎えました。
スポーツクライミングをテーマにした異色作であり、尚且つ女子高校生の成長を描いた同作品の持つ清々しさと魅力について語ります。
「いわかける!」とは
改めて「いわかける!-Sport Climbing Girl-」は石坂リューダイさんによってCygamesのウェブコミック配信サイト「サイコミ」で2017年12月~2019年5月に連載された作品がベースになっています。
現在は第2章「いわかける!!-Try a new climbing-」が連載されています。
1.初のクライミングをテーマとしたアニメ
スポーツをテーマにした漫画・アニメは数あれど、本作はあえて高校スポーツとしてはレアな競技として扱われるクライミングに焦点を当てています。
以下、スポーツアニメのランキングの20位までの抜粋(引用:ranking.net/rankings/best-sports-animes)と競技をまとめてみました。
スポーツアニメランキング
- 1位
- 2位
- 3位
- 4位
- 5位
- 6位
- 7位
- 8位
- 9位
- 10位
- 11位
- 12位
- 13位
- 14位
- 15位
- 16位
- 17位
- 18位
- 19位
- 20位
純粋にスポーツと呼べないものも含まれますが、50位まで見てもクライミングは含まれていません。
それだけスポーツにおいては新しいジャンルであり、珍しいアニメ作品と言えます。
そもそも漫画においても躍動感やスピード感の表現はどうするんでしょうかね。いつか漫画も読んでみたいです。
とにかく、テーマとして初のクライミングアニメになりました。
2.スポーツクライミングを伝える
この作品のもう一つの魅力は、初心者女子高生の通してスポーツクライミングを紹介し、詳しく解説しているところです。
正直言って、クライミングは身近なものではありませんよね。
ただ、2021年のオリンピック競技の1つでもあり、全く知らないものではありません。
しかし残念ながら具体的にどんなルールなのか、スポーツニュースのダイジェストでは結果くらいしか分かりません。
視聴者は主人公で初心者の笠原好を通して、用語や競技のルール説明を分かりやすく学ぶ疑似体験をして、取っ付きにくかったクライミングに触れることが出来ます。
以下は詳しい競技の種類と公式ルールですのでもっと知りたい方は参照ください。↓
www.2020games.metro.tokyo.lg.jp
3.高校スポーツ としてのクライミング
女子高生とクライミングは、正直言って異色の組み合わせであり、定番となってきた「少女(か弱いイメージ)+Something(不釣り合いなもの)」の流れに沿っています。
例えば、アサルトリリィならば”美少女+巨大な武器”だったり、ゆるキャン△なら”少女+キャンプ”という感じですかね。
しかし、そう言った意外性を売りにしているわけではなく、今や高校生のスポーツとして成立し、(私が知らないだけで)全国高校生クライミング選手権はもう10年の歴史があるようです。
今やオリンピック競技となったボルダリングは高校スポーツの枠に収まらず、世界共通のスポーツです。
目指すスポーツがオリンピック競技になるってすごいことですし、プロだってあります。
これから競技人口が増え、一気に広がる可能性もありますね。
4.クライミングへのアプローチ
初心者女子高生のフィルターを通して、クライミングがただ単純に登るだけではなく、頭を使う競技であることを紹介してくれています。
特に主人公は、元パズルゲームの熟練ゲーマーという背景を活かして成長します。
他のスポーツの場合は経験年数がものを言い、何歳から始めたかで埋められない差が存在します。(実際クライミングもそうなんでしょうけど...)
主人公のパズル脳が異名マーダーオブザベーション(狂気的観察力)として、足りなかった経験を少しだけ埋め合わせているところも作品の見どころです。
もちろんそれだけでは補えない体力や技術、知識と経験は常に課題として描かれています。
5.成長と課題
圧倒的経験の足りない主人公は、常に発見と課題のクリアによって成長していきます。
その躍進ぶりが清々しい。
比較的恵まれた体格とパズル脳によって、2回目の大会にして成果と才能の片鱗を見せます。
しかし競技の種類によっての得手不得手や基礎体力の重要性、経験値がものをいうのは、クライミングは”そんなに甘いもんじゃない!”という戒めですね。
主人公は、6分間で高さを競う”リード”という競技は得意ですが、タイムを競う”スピード”という競技は最後まで結果を出せませんでした。
でも、そこがまた面白いところでもあります。
6.物語を彩るキャラクター
クライミングがテーマなので、登場人物の個性をどう描くのかも注目のポイントでした。普通なら黙々と登って自問自答だけする、地味な感じになってしまいます。しかしそこは女子高生というベースによって、カラフルで華やかなキャラクターが登場することでバリエーション豊かになりました。(ウエアもカッコよくてお洒落ですね。)
作中、世界トップクラスの実力者の”来栖アンネ”やクライミングスパイダーこと”岩峰一愛”など各高校に突出したキャラクターが出てきますが、その中でも私は同じ高校の同級生”上原隼”が気になりました。
彼女は主人公の好をクライミングの世界へ導いたきっかけであり、競技の厳しさや客観性を伝えるナビゲーターの役割でした。自身、子供の頃から競技に参加した実力者でありながら、好の才能を引き立てる努力の凡人です。故に好への嫉妬と焦りによって精神的な弱さも露呈します。彼女の成長も物語を彩る重要なピースでした。
まあ、全体的変な人が多かったですね(笑)。
(引用:
https://news.yahoo.co.jp/articles/eb6bfc9fdeef980a8eaf017dec0f9960e0af2b64)
ちなみに第1壁(話)が隼ちゃんが輝いた回でした。↓
7.クライミングの魅力は子供たちへ
この作品は残念ながら深夜遅くに放送されたので、これから競技を始めるかもしれない子供たちには観られていないでしょう。(アーカイブして欲しいな)
クライミングの知識や情報がバランスよく表現されており、競技説明としても非常に良い作品と思いました。クライミング学習教材としても使えるレベルでしょう。
サッカーや野球のようなメジャースポーツに比べるとまだまだ身近ではないかもしれませんが、ジャングルジムを登ったり壁をよじ登ったりした幼き日の体験や達成感がそのままスポーツとして繋がっていることを感じ、スポーツイントロダクションとして好感が持てました。
多くの競技が存在する中で、選択肢の1つとして是非子供たちに観てほしいです。
そして大人になっても体を動かすことでの喜びや単純に登る事での達成感は同じだと思います。オリンピック競技になって、ボルダリングが出来る施設も少しずつ増え始めました。
アニメを通して、クライミングに触れ、始めることでの競技人口の底上げになればもっとこの作品は活きると思います。
加えて、漫画は続編があり、出来ればこの続きが放送されればいいですね。
アニメ初回の冒頭に野口啓代さんと主人公の競技が描かれています。野口さんのオリンピックの活躍(出来れば金メダル)で再びこの作品が注目されることに期待したいと思います。