2021年を迎えるにあたって、どうしても気になったことがありました。
それがこのマンガがすごい!2021で2021年オンナ編で1位になった「女の園の星」です。
みなさんこのマンガをご存知でしたか?
タイトルから女子の世界の何を現すのか妄想を膨らませていましたが、実際に読んでみると全く違いました。
何ていえばいいんでしょう...(笑)。この平和な作品の日常とクスっと笑えるセンスに脱帽です。
まずはランキングのおさらいです。
このマンガがすごい!2021年のランキング
オトコ編
1位 『チェンソーマン』 藤本タツキ(集英社)
2位 『葬送のフリーレン』 山田鐘人(作)アベツカサ(画)(小学館)
3位 『九龍ジェネリックロマンス』 眉月じゅん(集英社)
4位 『水は海に向かって流れる』 田島列島(講談社)
5位 『竜女戦記』 都留泰作(平凡社)
6位 『ダンピアのおいしい冒険』 トマトスープ(イースト・プレス)
7位 『大ダーク』 林田球(小学館)
8位 『忍者と極道』 近藤信輔(講談社)
9位 『僕の心のヤバイやつ』 桜井のりお(秋田書店)
10位 『ベルリンうわの空』 香山哲(イースト・プレス)
オンナ編
1位 『女の園の星』 和山やま(祥伝社)
2位 『後ハッピーマニア』 安野モヨコ(祥伝社)
3位 『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』 笹生那実(イースト・プレス)
4位 『マイ・ブロークン・マリコ』 平庫ワカ(KADOKAWA)
5位 『カラオケ行こ!』 和山やま(KADOKAWA)
6位 『ミステリと言う勿れ』 田村由美(小学館)
7位 『わたしの幸せな結婚』 顎木あくみ(作)高坂りと(画)月岡月穂(キャラ)(スクウェア・エニックス)
8位 『かしこくて勇気ある子ども』 山本美希(リイド社)
9位 『消えた初恋』 アルコ(画)ひねくれ渡(作)(集英社)
10位 『ゆびさきと恋々』 森下suu(講談社)
オトコ編の「チェンソーマン」や「葬送のフリーレン」は大手少年誌の連載とあって、前から認知度が高かったです。
以下「葬送のフリーレン」の紹介をしたことがあるので、まだ読んだことのない方の参考になれば覗いてみてください。
しかし、オンナ編に関してはまったく馴染みがなく、ランキング中の安野モヨコさんくらいしか分かりませんでした...。
何事も知ることから始めようと、今回1位の「女の園の星」を購入して読んでみました。
ちなみに作者の和山やまさんが5位の「カラオケ行こ!」でもランクインしており、注目ですね。
「女の園の星」って
(引用:「女の園の星」特設サイト)
まずは作品紹介します。
和山やまさんがFEEL YOUNGで連載中の高校教師の日常を描いた漫画作品です。
ギャグ漫画ではなく、日常系ナンセンスコメディというべきでしょうか。
男性教師の星と同僚教師・女子高生によるコミュニケーションで起こる、違和感をベースにした独特の笑いがあります。
一言で言うと完全に変化球です(笑)。
高校教師 星のキャラクター
物語の主人公は星です。
タイトルの”女の園”から勘違いしそうですが、星は人気者とか1番という意味ではなく、あくまで星さんという名前のようです。
(作中からダブルミーニングとは感じられませんでした。)
現代文の教師で比較的地味で堅物のイメージのキャラクターです。
決してイケメンというわけでもなく、ニヒルではありますが変人というわけでもありません。ちょっとずれているくらいですね。
以下、特徴とプロフィールをまとめてみました。
・年齢:33歳
・元小学校教諭
・既婚(3歳の子供がいる。)
・大学では漫画研究会
・魚が嫌い
・服装がいつも同じ(過去に無印良品というあだ名を付けられていた)
・酔っぱらうとよく笑い、謝り魔になる
以上、まだまだ謎が多く、そもそも本人から積極的に話すよりは何かのついででサブエピソードが出てくるといった感じです。
女子高というCLOSED環境の設定
1巻の作中はほぼ女子高校内の話です。
あくまで学校内というCLOSEDなシチュエーションを利用した 女子高生を媒体とした星のエピソードが主流です。
この設定ならではの、条件が付いたシチュエーションが一層主人公の変わり者感を増幅させています。
そもそも教師と女子高生しか出てきません。かなり勇気のいる設定ですね。
異物と異物の異文化コミュニケーション
この漫画の面白さは、違和感でしょうか。
女子高生と男子教師、10代と30代、女子高生というポップカルチャーとニヒルな堅物という対比によって起こる異文化コミュニケーションがクスっと笑えます。
また、同僚の体育教師の小林というある意味普通のキャラクターとの対比で主人公が少し変わり者という演出が醸し出されています。
感想
読んだことがありそうで、ないような不思議な感覚になる作品でした。
女子高という舞台設定ですが、ありがちな美少女が出てきたりイケメン教師が出てきたりすることはありません。
あくまで普通の登場人物ばかりで、悪意も恋愛的要素もほぼないと言っていいでしょう。
しかも画風が素朴というかお世辞にも上手で可愛らしい感じではありません。
これ女性漫画誌の連載ですよね?
どっちかというと蛭子能収風タッチのナンセンス風といえばいいでしょうか(笑)。
そこが逆に日常感とちょっと変なコミュニケーションの違和感を表現しています。
カット割りも4コマ漫画風な要素があり、いい意味で動きがない作風です。
漫画特有の少ないカット割りで因数分解して、読者に想像してもらうような工夫はなく、ベタな見たままの表現が逆に独特な空気感を出しています。
(これは意図的なのか、結果として面白くなっているのかは分かりません。)
作品の中で星を観察している女子高生の日記が出てきます。
その中で6ページを割いて、日記の字だけを読ますという私の中では斬新の構成がありました。
まるでこの部分だけは小説を読んでいるかのような感じになり、逆にその後の主人公の背景を見せるための面白いサブエピソードとして想像を掻き立てられました。上手い!
そもそも女子高の教師という絶好の舞台設定でありながら、あえてそこに焦点を当てていないところもポイントですね。
ロマンスやドロドロした人間関係、スポーツや青春といったありがちな要素を排除してあくまで女子高教師の日常を描くセンス、気に入りました(笑)。
ただし、キャラクター紹介も含めて1巻から今後の展開を考えたときに、 この先のバリエーションはどのように持って行くのでしょうか?
星のキャラクターの深堀はあるとしても、ギャグ漫画的要素がない以上は日常系の盛り上がりには限界が来ますね。(微笑ましく見守る作品という手もありますが。)
豊富に扱える女子高生や他の教師の個性は使えるでしょうが、毎回個性的な女子高生が登場するタイプの作品ではないと思いました。
その分、ネタとしてのストックが気になるところです。
(無限にエピソードを作れる可能性もありますが、逆に飽きられる可能性も高いと思います。)
クスっと笑える日常系漫画として、あえて外したスローカーブのような作風が今後どのように展開していくのか期待したい思います。
みなさんがどう感じるのかも気になるところ、
これは是非1度読んで欲しい作品です。
では、2021年もアニメに漫画に楽しみましょう!